May 24, 2014

ピエール・デシールを知りさらせ

 まずくだらない話題を消化しておく。
 Desirの呼ばれ方は、番組によって「デサー」「デザー」「デジーア」などてんでバラバラであるが、一番多いのが「デシーア」に近い音、何よりリンデンウッド大学チャンネルが「デシーア」。本人の自己紹介動画を見つけられていないのが詰めの甘さ。
 一方、Pierreのカナ表記は「ピエール」が市民権を得ている。だったらピエール・デシーアでいいじゃねえか、という発想は安易である。なぜなら、彼の名前で何よりも重視すべきは「韻」だからである。レポーターや実況などが「ピィエーアデスィーア」と気持ちよさそうにライミンしているグルーヴ感が何よりも優先されるべきである。従って彼の名前は、小生の中ではピエール・デシールかピエア・デシーア以外に考えられないのであり、協議の結果前者を採用した次第である。

 どうです、本当にくだらなかったでしょう。
 では本題。

ピエール・デシール Pierre Desir(リンデンウッド大)
 6-1/191 腕33インチ
 40yd:4.59 垂直:35インチ 立幅:11'1''  3コーン:6.86 シャトル 4.30


 NFLのドラフト指名を受けたリンデンウッド大学史上初の選手。つまりスモールスクール中のスモールスクール出身。
 コンバイン成績は一見平凡に見えるが、というか実際に一種目を除いて平均的だが、立ち幅跳びだけなんと全DB中トップ、全選手中でも2位という「急にどしたオイ」なバネの持ち主。
 高さもあるうえに腕の長さは33インチで、これを超えるDBは3人しかいない(うち一人はギルバート)、それでいてスロットの横の揺さぶりにも対応できる動きを持っているため、カレッジ時代のコーチは彼を(デカイのにポイントガードができる)レブロン・ジェームズに喩えていたらしい。
 
 こちらの記事は、短編小説レベルのデシール物語である。一つの記事としてはクソ長いうえに彼の大学時代の経緯が複雑なので、以下のまとめに誤認があったら申し訳なし。とにかくデシールがいかに苦労人であるかが伝われば。

 ハイチ出身の移民2世。軍事クーデターなどの政争を避けるため、両親に付き添って4歳の時にアメリカへ移民。セントルイス行きを命じられ、与えられた住居はボロアパートだったにもかかわらず、それを全くボロボロだと思わなかった、というくらいの環境からの移民だった。息子に教育だけは受けさせたいと考えた両親は、時給7ドルのアルバイトで必死に働いたそうである。

 ピエールは元々サッカー少年だったが、高校でアメリカンフットボールを勧められて転向。持ち前のずば抜けた運動神経であっという間にスターとなった。
 一方、高校で知り合った彼女の妊娠が発覚したのが15歳の時。ショックを受けながらも父になることを決意し、16歳で人の親に。

 アメフトでは、ミズーリ、ミシガン州立、カンザス州立などの強豪校からのリクルートも受けていたが、入学のための試験の点数が足りずに断念。高校時代の先輩のつてで、Div-IIのウォッシュバーン大学に入学。
 同大学は家から約300キロ離れていた。幼い娘を持つピエールは毎週末、チームメイトがパーティに興じる中、車で4時間かけて彼女(のちに妻)と娘に会いにいき、娘のおむつを替えてミルクを飲ませる日々を送った。
 赤シャツ2年生の年、彼女の二人目の妊娠が発覚したため、彼女と娘をウォッシュバーン大学近くに呼び寄せる決意をする。
 家族と近くなった代わりに毎月500ドルの家賃負担が発生することとなり、妻もパートに出ることに。二人目の娘が誕生すると、ピエールは朝5時半に起きて練習に出て、午後4時頃に戻るや彼女をパートに送り出して育児をバトンタッチし、2人の娘の相手や料理など家事を全てこなし、深夜には、子供が泣くたびに2時間おきに目を覚ましてあやす生活を送った。
 長女の4歳の誕生日に、苦楽を共にした彼女にサプライズでプロポーズし、結婚。

 ピエールがリンデンウッド大学への転籍を決意したのも子供のため。州のチャイルドケアサービスを申請するも受けることができなかったため、ピエールと妻の実家近くに戻って、両家の親にも子供の面倒を見てもらえる環境を優先させた。
 しかしピエールをリクルートした恩師であるウォッシュバーン大学のHCが、家族だけを実家に帰すことを提案し、ウォッシュバーン大学からの除籍を拒否したため、リンデンウッド大学移籍後一年間は奨学金を受けられなくなってしまった(※アメリカの大学のシステムはよくわからないがたぶんこう)。
 子育ての拘束時間からはある程度解放されたが一気に生活が苦しくなったピエールは、下水管の掃除、浸水して汚物が溢れる民家の地下室の掃除など、過酷な日雇いバイトを色々と体験した。

 これほどの苦労をしたピエールは、それでも不満や文句を全て内に抑え込んだそうである。
 なぜなら、移民して言葉もわからない中で、自分のために時給7ドルで働き続けた両親がもっと辛かったことを知っているから。

 こちらの動画の最後のピエールの台詞が痺れる。
「これまでの人生は、僕を強くし、良き父、良き夫に育ててくれた。もし生まれ変わっても喜んで同じ人生を歩みたい」

 彼の性格面での評価はとにかく ”mature” 一色。「成熟している」「精神的に大人」といったニュアンス。家族と一緒にいられることが全てのこの男なら、クリーブランドにも不満を漏らさないだろう。

 開幕は、4番手をマクファッデン、トルーファントと争う形。トップレベルを経験していないこともあって、一年寝かしと予想するのが妥当な選手だが、シニアボウルでも見せ場を作ったように、もう少し早い段階で試合に出てくるかもしれない。ポテンシャルは言わずもがな、こいつが跳ねたらとんでもないデプスに。

Posted by karashimentai at 14:01
この記事へのコメント
うーん、感動しました。

マンゼールのような、煌びやかな経歴の持ち主のウラで、このような選手を採っていたとは…。

もうこの時点でサクセスストーリーなのかも知れませんが、更に続くといいなと本気で思いました。。
Posted by vinta at May 24, 2014 23:18
いい選手増え過ぎたらトレードしたったらええやん、と思ってましたが、こういう選手は手放したくないですねえ。

誰かSに回ったりはできないのかしらん。
Posted by pappy at May 25, 2014 02:45
こういう選手には、是非ともプロで成功してほしい。
勿論、うちでの成功を望んでますが…ダメなら他球団どこでもいいから頑張ってもらいたい。
しかし、性格的な心配がないのは大きいですね。こういう選手は性格+伸びしろで、いろんなことを吸収しロースターに残れるんじゃないかな…って。
どんなに学生時代にスターで、全ての人を唸らせるくらいの選手でも、ダメ人間じゃね…。
判官びいき…でもいい。
応援したくなります。
Posted by 茶色 at May 25, 2014 10:34
いい話ですねぇ。
デシールには成功して欲しいですし、後、ギルキーも成功して欲しいですね。
しっかし、苦労人も居れば元イジメられっ子もいれば、ジャンキーもいるし、麻薬の売人もいるし、セクハラで訴えられたと思ったら実は詐欺だったという訳の分からん奴もいる。みんな成功してほしいですね。
ただ、デシールの話で教訓があるとするならば、セックスする時にはコンドームをつけておけという話になりますよね。敢えていうなら。
Posted by フリ歩 at May 25, 2014 11:00
こういう選手にはチームの中心選手として活躍して欲しいですし、
素行の悪い選手に対するロールモデルにもなって欲しいです。

恵まれた身長、腕の長さ、非凡なジャンプ力。
ハイライトビデオを見た限りではパスキャッチも上手そうでしたし、
手薄なレーシーバー陣の助けになったりしませんかね。
Posted by redhotburger at May 25, 2014 14:51
思わずホロリとくるいい話しといい選手を紹介していただき、ありがとうございます。
ヘイデンとギルバートがいる中では、CBとしてはニッケルなどに限定されるかも知れませんが、頑張って欲しいものです。
なんかCBとSのデプスがイビツですね〜。他の方も書いてますが、だれかSにまわせないですかね。
Posted by ティティス at May 26, 2014 12:29
>vintaさん
確かにマンゼールとの対比がすごいですねw

>pappyさん
Sコンバートできそうなタイプにも思えないのですが、
あるいは首脳陣は考えているかもしれませんね。何せ完全にCBが(FSと比べて)ダブついたので。

>茶色さん
学生時分から、すでにナイトライフに全く興味がない、というのはかなりの安牌だと思いたいです。
まさかプロで遊びデビューすることもないと思いますがw

>フリ歩さん
マリーシックがコケているのでw この知りさらせシリーズから早く一人出てきてほしいです。
最後のところはツッコまない方向でw

>redhotburgerさん
とりあえずロスターを勝ち取って、両親も呼んで一族クリーブランドに引っ越してほしいですね。
レシーバーで使う発想はなかったw かなり器用な選手みたいですし、獲得したベテラン陣がケガの影響で全滅とかならw

>ティティスさん
シーズン後半には積極的にダイムパッケージを使いたくなるほど、充実したロスターになってほしいもんです。
Sは、個人的にはまだバデモシという秘密兵器に賭けているんですが、もう見限られかけてるかなあ…
Posted by mentai at May 26, 2014 21:20
あえてツッコむなら、ハイチ出身だと一家揃ってカトリックなんじゃないかな、と。
Posted by pappy at May 27, 2014 15:32